FOPLPとは?――大型パネルでFan-Outを作るパッケージ技術

FOPLPの工程とFOWLPとの違いに加え、大型Panelへの価値集中、事業Risk、日本企業の参入モデルまで整理する。

公開 2026/8/28 確認 2026/9/1 読了 21分 入門 執筆: 知識図書館 編集部

この記事の結論

  • FOPLPは円形ウェハではなく矩形パネル上でFan-Out構造を作る
  • 大型化は面積効率を高める一方、Panel 1枚への投入価値と最大損失も増やし得る
  • 日本企業には材料・装置・基板・実装の強みがあり、連合型や工程特化型も参入モデルになる

まず結論

FOPLPはFan-Out Panel Level Packagingの略で、円形の再構成Waferではなく、より大きな矩形Panel上でFan-Out Packageを一括製造する考え方です。

多数のPackageを効率よく配置してCostを下げる可能性がありますが、大面積を均一かつ高精度に加工する難しさがあります。さらに高価なLogic、HBM、Chipletを多数載せる場合、Panel 1枚に集まる経済価値と事故時の最大損失も大きくなるため、技術だけでなく契約・所有権・責任分担までが量産成立の条件になります。

矩形パネル上へ多数のチップを並べ、樹脂封止と再配線形成を行い、個々のパッケージへ切り分けるFOPLP工程図
図1 FOPLPは矩形PanelへDieを配置し、封止・RDL形成後に個片化する

FOWLPとの違い

項目FOWLPFOPLP
基板形状円形Wafer矩形Panel
面積利用円周部に余白が出る矩形製品を配置しやすい
装置基盤半導体Wafer設備を活用PCB・Display系設備も候補
主な課題再構成Wafer反り、Die Shift大面積均一性、搬送、反り、標準化

FOPLPは単にWaferを大きくしたものではありません。Panel寸法、材料、Carrier、搬送方法、装置構成が企業や方式で異なります。

基本工程

Die配置、Molding、Carrier剥離、絶縁膜形成、Via開口、Cu再配線、表面処理、端子形成、検査、個片化などを行います。RDL形成ではDry Film Resist、露光、現像、Cu Plating、Seed層のWetまたはDry Etchingなど、半導体・PCB・FPDにまたがる技術を使います。

期待されるメリット

  • 矩形PanelへPackageを高密度に配置できる
  • 1回の処理面積を増やし、生産性を高められる可能性がある
  • 大型Packageや複数Die構造へ対応しやすい
  • 既存のPanel加工技術を活用できる場合がある

難しさ

Panelが大きいほど、反り、たわみ、温度分布、膜厚、露光寸法、Plating電流、Etching速度を全面で揃えることが難しくなります。

また、装置間でPanel仕様を統一しにくいこと、Carrierとの接着・剥離、Molding収縮、Die Shift、微細配線の歩留まりも課題です。面積が大きいだけで自動的に低Costになるわけではありません。

Panel 1枚の価値とRisk Concentration

Panelが大型化すれば、1回に処理できるPackage数や面積利用効率を高められます。しかし、高価なDieを多数載せるほど、工程途中のPanel 1枚へ集約される価値も増えます。全面不良や搬送事故が起きたときの影響は、単なる材料費にとどまりません。

概念的な投入価値シナリオ

想定Package数1 Package投入価値(仮定)Panel投入価値
低価格1,0005,000円500万円
中価格5003万円1,500万円
高価格25010万円2,500万円
Multi-Die10050万円5,000万円
AI/HPC級64100万円6,400万円
超高価値想定64300万円1億9,200万円

たとえば加工売上をPanel 1枚当たり10万円、投入価値を5,000万円と仮定すると、500枚分の加工売上が1枚の全損額と同額です。しかも売上は利益ではありません。これは非対称性を示す思考実験であり、実際に加工会社がPanel価値の全額を無制限に補償するという意味ではありません。賠償範囲は所有権、検収条件、責任上限、保険など個別契約によって変わります。

Economies of ScaleとRisk Concentration

Panel大型化による面積効率とThroughputの向上可能性に対し、搭載Die数、投入価値、全面不良時の最大損失も増えることを対比した図
図2 大型化には規模の経済とRisk Concentrationの両面がある

日本企業は参入できるのか

結論からいえば、参入余地はあります。日本企業は材料、真空・Plasma装置、成膜・Etching、Dicing、Package Substrate、Assemblyなどに強みを持ちます。ただし「FOPLPを量産している企業」と「FOPLPに使える装置・材料・基盤技術を供給する企業」は分けて見る必要があります。

企業・枠組み公式に確認できる役割この記事での位置付け
Resonac・JOINT327社が参加し、515 × 510 mmのPanel Level Organic Interposer試作Lineで材料・装置・設計を共同開発日本型の共同開発例。FOPLP量産そのものとは同一視しない
ULVAC500〜600 mm角対応のPLP向けTi/Cu Sputtering、600 mm角対応のDescum・Ti Etching・Ashing装置FPD等で培った大型基板処理をAdvanced Packagingへ展開する装置企業
DISCO大型PanelのDicing・Singulationに対応する装置を公表後工程の工程特化例
IBIDENAI Server等のHigh Performance IC Package Substrateへ2026〜2028年度に約5,000億円の設備投資を計画高価値Advanced Packagingの基板企業。FOPLP量産主体とは断定しない
SHINKOPackage Substrate、Flip-Chip、IC Assembly、2.3D、Optical Chiplet/CPOを展開基板・実装・Assembly能力の例。FOPLP量産主体とは断定しない
TOPPANFC-BGA、Organic RDL、Glass Substrate/TGV、Coreless Organic Interposer等を開発PhotolithographyとBuild-up Wiringを含む基盤技術の例

4つの参入モデル

Model強み主な課題
A:巨大OSAT型Die受入からMolding、RDL、検査、Singulation、Final Testまで一社統合責任、Process Data、原因解析を一元化しやすい巨額投資、顧客基盤、預かり資産へのRisk Exposure
B:コンソーシアム型材料・装置・Process・基板・実装・検査を企業連合で構築各社の得意技術を結集できる商用化時のPanel所有者と加工責任を別途決める必要
C:工程特化型Ashing、Sputtering、Plating、Laser Via、検査、Dicing等へ集中日本の材料・装置企業と親和性が高い前後工程とのData連携とProcess保証の範囲
D:顧客資産・Risk Sharing型高価なDie・Panelの所有権を顧客側に残し、加工Serviceを提供加工会社への価値集中Riskを契約で調整しやすいLiability Cap、Scrap判定、Material・装置責任、保険の明文化

JOINT3はModel Bを考えるうえで重要な実例ですが、共同研究の成立と量産事業の成立は同じではありません。商用段階では「誰がPanelを所有し、どこで検収し、どの損失を誰が負うか」というCommercial Modelが必要です。

日本型FOPLP Ecosystem

「日本がFOPLPで勝つ」ことを、日本版の巨大OSATを1社作ることだけに限定する必要はありません。Resin、Dry Film Resist、Cu・Chemical、Plating、Vacuum、Plasma、Etching、Sputtering、Exposure、Inspection、Dicing、Package Substrateなどを担う企業群が、FOPLP Manufacturing Platformを構成する道も考えられます。

一方、分業すれば自動的に解決するわけでもありません。工程は次のように連鎖します。

Molding収縮 → Die Shift → Exposure Alignment → RDL位置精度 → Via・Plating → Electrical Yield

企業を分けすぎると、不良原因の解析、責任分界、Process Data共有、Feedback速度が悪化します。企業は別でも、Dataと責任体系を一つのFactoryのようにつなぐ仕組みが必要です。

FOPLPが向く領域

大型Package、複数Die、高密度RDLを必要とし、処理面積拡大による経済性が得られる製品が候補です。要求線幅が厳しいほど、装置精度と材料制御への投資も大きくなります。

高価なAI/HPC用途はFOPLPの処理面積を生かせる候補である一方、Panel価値の集中も大きくなり得ます。技術的に作れることと、市場として成立することは同じではありません。

FOPLPの参入障壁は、600 mm Panelを加工できるかだけではありません。数千万円から億円単位の価値が集中し得るPanelを誰が所有し、加工し、検査し、事故時の損失を誰が負うのか。所有権、責任上限、工程保証、保険を含む商流とRisk Sharingまで設計できて、初めて巨大量産市場として成立するのではないでしょうか。

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