半導体とは何か?――スマホから自動車まで、現代社会を支える小さな回路
半導体という言葉の意味から、材料、電子と正孔、pn接合、トランジスタ、IC、半導体の種類、製造・パッケージへの入口までを整理する。
この記事の結論
- 半導体は、電気の流れ方を制御できる材料と、それを使ったデバイスの両方を指す
- 電子と正孔、n型・p型、pn接合を組み合わせてDiodeやTransistorを作る
- Logic、Memory、Power Semiconductor、Sensorは同じ半導体でも役割と重視する性能が異なる
この記事で分かること
- 「半導体」という言葉が何を指しているのか
- 導体・絶縁体と半導体の違い
- なぜシリコンが広く使われているのか
- ウェハ、トランジスタ、ICの関係
- 「半導体を作る」とは実際には何をしているのか
まず結論
半導体を一言で説明すると、電気の流れ方を人間が制御できる材料と、それを利用して作られた電子回路です。
ただし、日常会話で使われる「半導体」という言葉には少し注意が必要です。
本来の意味ではシリコンなどの「材料」を指します。一方でニュースなどでは、CPU、メモリ、センサー、パワーデバイスなどの半導体デバイスやICそのものをまとめて「半導体」と呼ぶこともあります。
この二つを区別すると、半導体製造の話が一気に分かりやすくなります。
導体・絶縁体・半導体
電気を流すという観点から、材料は大まかに次のように考えられます。
- 金属など、電気を流しやすいもの:導体
- ガラスや樹脂など、電気を非常に流しにくいもの:絶縁体
- 条件によって電気の流れ方を大きく変えられるもの:半導体
重要なのは、半導体が単純に「導体と絶縁体の中間」だから便利なのではないことです。
温度、光、電界、不純物の添加などによって、電気的な性質を意図的に変えられることに大きな価値があります。
この性質を利用すると、電流を流したり止めたりする「スイッチ」を非常に小さなサイズで作ることができます。
シリコンとは何か
現在の半導体産業で最も広く利用されている材料の一つがシリコン(Si)です。
シリコンは地球上に豊富に存在する元素ですが、半導体製造では極めて高純度に精製し、結晶として成長させて使用します。
大きなシリコン単結晶を円柱状に作り、それを薄く切った円盤がシリコンウェハです。
半導体工場では、このウェハの表面に非常に微細な構造を何層も作り込んでいきます。
ウェハ上には同じ回路を多数作り、検査後に一つずつ切り分け、外部と接続できる形に実装・封止します。
トランジスタとは何か
現代のデジタル半導体を理解するうえで中心となる部品がトランジスタです。
非常に単純化すると、トランジスタは電気で操作する超小型スイッチと考えることができます。
0と1を扱うデジタル回路では、このスイッチを大量に組み合わせることで、
- 計算する
- 情報を記憶する
- 信号を処理する
- 外部機器を制御する
といった複雑な処理を実現します。
実際のトランジスタの動作は半導体物理によって説明されますが、製造技術を理解する入口では「非常に小さな電気的スイッチ」と考えて構いません。
ICとは何か
ICは Integrated Circuit、つまり集積回路です。
一つのトランジスタだけではできることは限られます。
そこで、多数のトランジスタ、配線、抵抗、コンデンサなどを一つの基板上に形成し、一つの機能を持った回路として作ります。
これがICです。
CPUやメモリも、その延長線上にあります。
したがって「半導体を作る」という表現は、実際には、
半導体材料の上に、極めて小さな電子部品と配線を大量に形成すること
を意味している場合が多いのです。
半導体は「削って作る」のではない
ここは半導体製造を理解するうえで非常に重要です。
金属部品であれば、大きな材料を切ったり削ったりして形を作るイメージがあります。
半導体は少し違います。
ウェハ表面に、
- 薄い膜を作る
- 必要な形を転写する
- 不要な部分を削る
- 洗浄する
- 必要な場所に別の性質を与える
- 表面を平らにする
といった処理を何度も繰り返します。
つまり半導体は、巨大な塊から一気に削り出すというより、極薄の材料を積み、形を作り、不要部分を取り除く工程を繰り返して構造を作り込む製品です。
なぜこれほど微細にするのか
一般に、より小さな領域へ多くの素子を配置できれば、限られた面積に多くの機能を持たせることができます。
しかし微細化すれば、単純にすべてが良くなるわけではありません。
加工精度、材料、発熱、リーク電流、配線抵抗、量子的な現象など、さまざまな問題が顕在化します。
そのため半導体の進歩は、「小さく描けるようになった」という一つの技術だけで成立しているわけではありません。
材料、成膜、エッチング、露光、洗浄、計測、制御など、多数の技術の積み重ねです。
半導体はどこに使われている?
身近なところだけでも、
- スマートフォン
- パソコン
- テレビ
- 自動車
- エアコン
- 冷蔵庫
- 通信基地局
- 工場設備
- 医療機器
- データセンター
など、ほぼあらゆる電子機器に使われています。
さらに「半導体」と一括りにしても、計算を担当するもの、記憶するもの、電力を制御するもの、光を検出するものなど役割は大きく異なります。
半導体デバイスにはどのような種類がある?
- Logic:計算、判断、制御を行う。CPU、GPU、各種Controllerなど
- Memory:情報を記憶する。DRAM、NAND Flashなど
- Power Semiconductor:電力を変換・制御する。MOSFET、IGBT、Diodeなど
- Sensor:光、温度、圧力、加速度などを電気信号へ変える
同じ「半導体」でも、Logicでは集積度と演算性能、Memoryでは記憶密度、Power Semiconductorでは耐圧・電流・損失・放熱、Sensorでは検出感度やNoiseが重要になります。
シリコン以外の半導体材料
シリコンは主流ですが、すべての用途に最適とは限りません。
- SiC:高耐圧・高温・Power用途で重要
- GaN:高周波・高効率Power、光Deviceなどで利用
- GaAs:高周波・光Deviceなどで利用
Band Gap、電子移動度、絶縁破壊電界、熱伝導率、製造性、Wafer Costなどの違いが、用途とDevice構造を左右します。
原理を深く知るための入口
半導体の動作を厳密に理解するには、Band Gap、電子と正孔、真性・不純物半導体、n型・p型、pn接合へ進みます。
pn接合からDiodeへ、電界でCarrierの流れを制御する考え方からTransistor・MOSFETへ、さらに多数を接続してICへ進みます。製造工程は、この物理的な構造を材料上へ実際に作る技術です。
半導体とFPD
製造技術を学ぶうえでは、FPD(Flat Panel Display:フラットパネルディスプレイ)も重要です。
液晶やOLEDなどのディスプレイでは、ガラス基板上に薄膜トランジスタなどを形成します。
半導体ウェハと大型ガラス基板ではサイズも構造も要求も異なりますが、
- 膜を作る
- パターンを形成する
- エッチングする
- 洗浄する
といった基本技術には共通点があります。
一方で、基板が巨大になることで、ガス、温度、プラズマ、搬送、電気特性などに別の難しさが生まれます。
この違いは下層の記事で詳しく扱います。
実際には「導体と絶縁体の中間」だけでは説明できない
入門説明では、半導体を「導体と絶縁体の中間」と表現することがあります。しかし、抵抗値が中間であることだけが本質ではありません。
重要なのは、不純物濃度、電界、光、温度などによって、キャリアである電子や正孔の数と動きを制御できることです。また、実際のデバイスにはシリコンだけでなく、絶縁膜、金属配線、バリア膜など多くの材料が組み合わされています。
よくある誤解
- 半導体はシリコンだけである:シリコンが主流ですが、SiC、GaN、GaAsなども用途に応じて使われます。
- チップとウェハは同じものである:ウェハは多数の回路をまとめて作る基板で、チップはそこから切り分けた一片です。
- トランジスタは機械式スイッチと同じである:スイッチという説明は機能をつかむための近似です。実際には電圧で半導体中の電荷の流れを制御します。
- 微細化だけで性能が決まる:材料、構造、配線、消費電力、発熱、製造ばらつきも重要です。
さらに深く知る
ここから先は、興味に応じて異なる枝へ進めます。
- 物理:Band Gap、電子と正孔、n型・p型、pn接合
- Device:Diode、Transistor、MOSFET、IC、Logic、Memory、Power、Sensor
- 材料:Si、SiC、GaN、GaAs
- 製造:Wafer、前工程、後工程、Package、Final Test
- Package:BGA、CSP、WLP、Fan-Out、FOWLP、FOPLP、2.5D・3D、Chiplet
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参考資料
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