半導体・FPD製造装置とは?――前工程・後工程・実装・検査を支える装置群
前工程装置からDicer、Die Bonder、Wire Bonder、Flip Chip Bonder、Molding、検査・計測、搬送FA、FPD装置までを俯瞰する。
この記事の結論
- 製造装置は材料・Wafer、前工程、Wafer Test、後工程、Package、Final Testの全段階にある
- 前工程では露光・成膜・Etching等、後工程ではDicer・各種Bonder・Molding・Tester等が役割を分担する
- 実機では加工原理に加え、搬送、制御、安全、均一性、再現性が重要になる
この記事で分かること
- 半導体の前工程・後工程・Packageでどのような装置が使われるのか
- 露光、成膜、Etchingだけでなく、Dicer、Die Bonder、Wire Bonder、Flip Chip Bonder、Molding、Testerの役割
- 装置の種類によって、光・薬液・熱・真空・プラズマなどをどう使い分けるのか
- プロセス装置と搬送・制御システムの関係
- 半導体装置とFPD装置の共通技術と、製品・基板による違い
まず結論
半導体製造装置は、非常に単純化すれば、
基板を決められた環境に置き、ガス・薬液・熱・プラズマ・光などを正確に作用させる機械
です。
露光装置は回路パターンを転写し、成膜装置は薄膜を作り、Etching装置は不要な膜を除きます。加工済みWaferの後にも、Wafer Prober、Back Grinder、Dicer、Die Bonder、Wire Bonder、Flip Chip Bonder、Molding装置、Final Testerなどが続きます。
装置の外形は工程や処理枚数によって大きく異なり、すべてが「巨大」なわけではありません。装置が複雑になる主な理由は、その処理を、
同じ場所に、同じ量だけ、同じ時間、毎回同じ結果になるように行わなければならない
からです。
半導体製造装置の難しさは、「反応を起こせるか」だけではありません。
制御できるか、均一にできるか、再現できるか、安全に繰り返せるかにあります。
製造装置は材料からFinal Testまで続く
半導体は複数の工程と装置を通って製品になります。
前工程には、
- 成膜装置
- エッチング装置
- フォトリソグラフィ装置
- 洗浄装置
- イオン注入装置
- 熱処理装置
- CMP装置
- 検査・計測装置
などがあり、後工程・Packageには、
- Wafer Prober・Tester
- Back Grinder
- Dicer
- Die Bonder
- Wire Bonder
- Flip Chip Bonder
- Molding装置
- Final Tester・Handler
などがあります。
「半導体製造装置」という名前の一種類の機械が存在するわけではありません。
一台ですべてを処理するのではなく、基板が役割の異なる装置を移動しながら構造を作り込んでいきます。
パターンを描く――フォトリソグラフィ装置
フォトリソグラフィ装置群は、設計した回路パターンをウェハ上のフォトレジストへ転写します。一台だけで完結するのではなく、レジストを塗布・現像するCoater/Developerと、光学像を投影するStepperまたはScannerなどが連携します。
露光装置では光源、マスクまたはレチクル、投影光学系、ウェハステージを高精度に制御します。重要なのは微細な像を作るResolutionだけでなく、既に作った層へ正しく重ねるOverlay、焦点、露光量、ウェハ位置です。プラズマや薬液ではなく、主に光学・精密機械・位置制御を使う装置です。
膜を作る――成膜装置
成膜装置は、絶縁膜、導電膜、半導体膜、バリア膜などをウェハ上へ形成します。代表的な方式は次のとおりです。
- CVD:原料ガスの化学反応で膜を作る
- PVD・スパッタ:材料を物理的に飛ばして堆積させる
- ALD:表面反応を順番に進め、薄い膜を高い追従性で作る
- 熱酸化:シリコン表面を酸化して酸化膜を形成する
方式によって装置構造は異なりますが、膜厚、面内均一性、組成、段差被覆性、応力、密着性、抵抗率、パーティクルなどを管理します。CVDやALDではガス・温度・圧力、PVDでは真空・プラズマ・Targetなどが主要な要素になります。
形を移す――エッチング装置
エッチング装置は、レジストなどのマスクで守られていない材料を除去し、パターンを下の膜へ転写します。
- Wet Etching:薬液との化学反応を利用する
- Dry Etching:真空中のガス、ラジカル、イオン、プラズマなどを利用する
削りたい膜と残したい膜の選択比、加工速度、面内均一性、側壁形状、下地ダメージを管理します。ここで真空、MFC、RF Generator、Matcherなどが登場するのは主にDry Etchingであり、すべての半導体製造装置に共通する構成ではありません。
洗う・剥がす――洗浄装置とWet装置
洗浄装置はパーティクル、有機物、金属汚染、薬液残り、反応生成物などを除去します。Wet装置は洗浄だけでなく、Wet Etching、レジスト剥離、表面処理にも使われます。
薬液濃度、温度、流量、循環、ろ過、リンス、乾燥を管理し、対象汚染を除去しながら下地を傷めないことが必要です。ウェハを一枚ずつ回転させるSingle Wafer方式と、複数枚を槽で処理するBatch方式などがあります。
電気的性質を作る――イオン注入装置
イオン注入装置は、Boron、Phosphorus、Arsenicなどの元素をイオン化し、電界で加速してウェハの必要な場所へ導入します。
イオン源、質量分析磁石、加速部、ビーム走査、ウェハ搬送などから構成され、注入量Dose、加速Energy、入射角度を制御します。真空は使いますが、Dry Etcherのようにウェハ全面へプラズマを作る装置とは原理も構造も異なります。
熱で反応させる――熱処理装置
熱処理装置は、酸化、拡散、イオン注入後の活性化、結晶損傷の回復、膜質改善などを行います。複数枚を炉内で処理するFurnaceと、ランプなどで一枚を短時間加熱するRTP/RTAがあります。
温度だけでなく、処理時間、雰囲気ガス、昇温・降温速度、ウェハ面内の温度分布が結果を左右します。
表面を平らにする――CMP装置
CMP装置は、化学反応を助けるSlurryと研磨Padを使い、積層で生じた凹凸を平坦化します。研磨ヘッド、定盤、Slurry供給、終点検出、洗浄・乾燥などが組み合わされます。
除去量、面内均一性、選択比、傷、Dishing・Erosion、研磨後の残渣が管理対象です。真空やプラズマではなく、化学・摩擦・流体・機械運動が中心となる装置です。
作ったものを確かめる――検査・計測装置
検査・計測装置は、膜厚、線幅、形状、重ね合わせ、欠陥、パーティクル、電気特性などを測ります。光学式検査、電子顕微鏡、膜厚計、寸法測定、電気検査など、測る対象ごとに装置が異なります。
加工装置のように材料を変化させることが目的ではありませんが、結果をRecipeや装置保全へ戻し、量産を安定させる役割を持ちます。
Wafer Test――Wafer ProberとTester
前工程を終えたWafer上の各DieへProbe Cardを接触させ、電気的な動作を検査します。Wafer ProberはWaferを位置決めし、温度を管理しながらProbe Cardへ正確に接触させます。Testerは信号を与え、応答、速度、消費電力、Leakなどを測ります。
検査結果はWafer Mapとして記録され、後工程で組み立てるDieの選別に使われます。
薄化・切断――Back GrinderとDicer
Back GrinderはWafer裏面を研削し、Packageや積層に必要な厚さまで薄くします。薄くなるほど割れ、反り、残留応力、搬送の難しさが増します。
DicerはWaferを個々のDieへ分割します。Blade Dicerは高速回転Blade、Laser DicerはLaser加工を利用します。切断位置精度、Chipping、Crack、切削粉、熱影響を抑え、Dieを傷めず回収することが目的です。
Dieを固定する――Die Bonder
Die Bonderは良品DieをWaferやTrayからPickし、Lead Frame、Package基板、Interposerなどへ高精度に配置・接合します。
画像認識、Pick-up機構、Bond Head、Stage、加熱・加圧、接着材料供給などを組み合わせます。位置・角度、Bond Line Thickness、Void、接合強度、熱抵抗が管理対象です。
電極を接続する――Wire BonderとFlip Chip Bonder
Wire BonderはDie Padと外部端子を細いWireで接続します。超音波、荷重、熱を組み合わせ、Bond強度、Loop形状、Wire間隔を制御します。
Flip Chip BonderはDieを反転し、Bumpを基板側Padへ位置合わせして接合します。多端子・短配線に向きますが、微細な位置合わせ、接合荷重・温度、Coplanarity、Underfill、熱応力が重要です。
封止する――Molding装置
Molding装置は樹脂などでDie、Wire、接合部を封止し、湿気、汚染、機械的損傷から守ります。樹脂の流れ、温度、圧力、硬化条件を制御し、Void、Wire Sweep、未充填、反り、Delaminationを防ぎます。
Wafer LevelやPanel LevelのPackageでは、再構成Wafer・Panel形成、RDL、Plating、DFR、Via加工、Compression Moldingなど別の装置群が加わります。
Final Test――TesterとHandler
Package組立後の製品をTesterへ接続し、機能、性能、電力、入出力、温度特性を確認します。Handlerは個々のPackageを搬送・位置決めし、必要に応じて温度を変えながらTest Socketへ接続します。
Wafer TestとFinal Testでは、対象の形態、接続方法、検査目的が異なります。
搬送・FA――工程と工場をつなぐ
装置内部のRobotだけでなく、FOUP、Load Port、OHT、Stocker、AGV、MESとの通信などが工場全体の搬送と生産を支えます。後工程ではWafer Frame、Tray、Reel、個片Packageなど、工程に応じて搬送単位が変わります。
搬送では位置精度、Particle、静電気、衝撃、取り違え、Traceabilityを管理します。装置単体の性能だけでなく、工場の物流と情報がつながって初めて量産が成立します。
真空プロセス装置を例に、中を見てみる
ここからは数ある装置のうち、Dry Etchingや一部のCVDのような真空プロセス装置を例にします。この構成は露光装置、CMP装置、イオン注入装置などへそのまま当てはまるものではありません。
搬送系
基板を装置内部へ運びます。
- Load Port
- Robot
- Transfer Chamber
- Load Lock
などが使われます。
真空装置の場合、大気中にある基板をいきなりプロセスチャンバーへ入れるわけにはいきません。
そのためLoad Lockで大気と真空の橋渡しをします。
Process Chamber
実際に反応を起こす場所です。
エッチング、成膜など、その装置の中心となる処理を行います。
チャンバー形状そのものがガス流れ、プラズマ、温度などへ影響することもあります。
真空系
Dry EtchingやCVDなどでは、チャンバー内部を大気圧より大幅に低い圧力にします。
そのため、
- Dry Pump
- Turbo Molecular Pump
- Valve
- Pressure Gauge
- APC
などを使用します。
真空ポンプは「空気を全部なくすため」だけにあるわけではありません。
プロセス中にはガスを供給しながら排気し、狙った圧力を維持するという使い方もします。
ガス供給系
プロセスガスを正確に供給します。
代表的な機器がMFC(Mass Flow Controller)です。
「ガスを流す」という単純な操作でも、流量が変われば反応状態が変化します。
複数のガスを使う場合は、それぞれの比率も重要です。
温度制御系
半導体プロセスでは温度が反応速度や膜質、エッチング特性などに影響します。
そのため、
- Heater
- Chiller
- 冷却水
- 熱媒体
- 温度センサー
などを使って温度を制御します。
設定温度と実際の基板温度が必ずしも同じとは限らない点も、実機では重要です。
RF系
プラズマを利用する装置ではRF電源が使われることがあります。
代表的には、
- RF Generator
- Matcher
- RF Cable
- Electrode
- Antenna
などで構成されます。
ここから先へ進むと、
「なぜ13.56 MHzなのか」
「なぜMatcherが必要なのか」
「ICP PowerとBias Powerは何が違うのか」
「大きな電極ではRFが均一に流れるのか」
といった、より専門的な世界へ入っていきます。
これらはDry Etching・プラズマ・RFの下層記事で扱います。
Generatorから見た負荷は、電極だけでなく、ケーブル、給電構造、チャンバー、プラズマを含む系として決まります。プラズマ状態が変われば負荷も変わるため、Matcherは固定の変換器ではなく、運転中に整合状態を調整する役割を持ちます。
装置を動かしているのは制御システム
これだけ多くの機器を人間が一つずつ手動操作していたら、安定した製造はできません。
そこでPLCや産業用PCなどを使って装置を制御します。
例えばDry Etchingで処理を開始すると、
- 基板を搬送する
- チャンバーを閉じる
- 真空排気する
- 規定圧力を確認する
- ガスを流す
- 圧力を安定させる
- RFを印加する
- 規定時間処理する
- RFを停止する
- ガスを止める
- 排気・パージする
- 基板を搬出する
といった処理が自動的に進みます。
この一連の動作をシーケンスとして制御します。
レシピとは何か
半導体製造装置では「Recipe」という言葉が頻繁に登場します。
料理のレシピと考え方は似ています。
例えば、
- Gas A:○ sccm
- Gas B:○ sccm
- Pressure:○ Pa
- RF Power:○ W
- Temperature:○ ℃
- Process Time:○ sec
といった条件を設定します。
装置はその条件になるよう各機器を制御します。
ただし、設定値が同じなら必ず同じ結果になるとは限りません。
チャンバー状態、部品温度、堆積物、消耗品、薬液状態、センサー誤差などによってプロセス結果が変化することがあります。
ここに量産装置の難しさがあります。
センサーとインターロック
装置には多数のセンサーがあります。
例えば、
- 圧力
- 温度
- 流量
- 位置
- 水流
- ガス圧
- 真空状態
- 扉の開閉
などを監視します。
さらに危険な操作が行われないよう、インターロックを組みます。
例えば真空チャンバーが大気圧の状態で開かない、冷却水が止まった状態で高出力RFを入れない、といった制御です。
製造装置は「プロセスを成立させる機械」であると同時に、異常時に危険な状態へ進ませない機械でもあります。
量産装置に共通する課題――均一性と再現性
小さな試験片に膜を付けたり、材料を削ったりするだけなら、比較的簡単に現象を起こせる場合があります。
製造装置では、それだけでは足りません。
基板全体で同じ結果にする必要があります。
例えばエッチングなら、
中央で100 nm削れたのに端では80 nmしか削れない装置では困ります。
CVDなら、中央と端で膜厚が大きく違っても困ります。
そのため、
- ガス分布
- 温度分布
- 圧力
- プラズマ分布
- RF分布
- 薬液流れ
- 排気位置
- チャンバー形状
などを設計します。
プロセス現象を起こすことと、その現象を大面積で均一に起こすことは別の技術課題です。
FPD装置などで大型化すると何が変わる?
これは大型ガラス基板を扱うFPD製造装置で特に目立つ問題です。半導体製造装置にも複数チャンバーや搬送系を含む大きなシステムはありますが、「半導体装置はすべて巨大」という意味ではありません。
小さな基板で成立した構造を、そのまま何倍にも拡大すれば大型装置になるわけではありません。
大型化すると、
- ガスが端まで同じように届かない
- 温度分布ができる
- 薬液の流れが変わる
- 基板がたわむ
- 搬送機構が巨大になる
- RFの電圧・電流分布を無視できなくなる
- プラズマ分布が変化する
といった問題が現れます。
これは装置技術を深く学ぶときの重要な視点です。
「原理を知っている」ことと「装置として成立させられる」ことは同じではありません。
よくある誤解
- 真空ポンプはチャンバーを空にするだけ:実際のプロセスでは、ガスを連続供給しながら排気し、バルブと組み合わせて圧力を保つ場合があります。
- レシピは完成品の品質を直接指定している:多くの場合、レシピが指定するのは流量、圧力、電力、温度、時間などの装置条件です。加工結果は装置状態や材料にも依存します。
- センサー値は基板上の状態そのもの:測定位置や応答遅れがあるため、表示値と基板表面の実際の温度・圧力・反応状態は一致しないことがあります。
- インターロックがあれば故障しない:インターロックは異常の発生自体をなくすものではなく、検出した異常から危険な動作へ進むことを防ぐ仕組みです。
機械・電気・化学・物理が全部つながっている
半導体製造装置が面白く、同時に難しい理由の一つがここにあります。
例えばDry Etching一つを取っても、
- 化学:ガスと材料の反応
- 物理:イオン衝撃、プラズマ
- 電気:RF、Matching、電界
- 真空:排気、圧力制御
- 熱:基板温度、冷却
- 流体:ガス分布
- 機械:チャンバー、電極、搬送
- 制御:PLC、PC、Recipe、Interlock
が同時に関係します。
後工程でも、Dicingでは材料・振動・流体・画像認識、Die Bondingでは接着・熱・位置制御、Wire Bondingでは超音波・塑性変形・電気特性、Moldingでは樹脂流動・硬化・応力がつながります。
一つの分野だけで装置全体を説明することはできません。
この知識図書館では製品と工程の全体地図から装置の枝へ入り、装置から必要な物理・化学・制御技術へ下へ下へと掘り下げます。
さらに深く知る――装置ごとに分岐する
ここまでで、半導体製造装置全体の地図ができました。
ここから先は興味のある装置へ進めます。
削る技術を知りたい → エッチング装置の比較記事 → Wet Etching装置 / Dry Etching装置の詳細記事へ
膜を作る技術を知りたい → CVD・PVD・ALDへ
薬液を使う装置を知りたい → Wet Etching装置・洗浄装置へ
プラズマを知りたい → Dry Etching装置 → プラズマ → RFへ
Dieを切り分け、接続する装置を知りたい → Dicer → Die Bonder → Wire / Flip Chip Bonderへ
先端Package装置を知りたい → WLP / Fan-Out / FOPLP → RDL / Plating / Via / Moldingへ
そして下層へ進むほど、実際の装置設計・プロセス・トラブル解析に近づいていきます。
関連記事
- 半導体技術の全体地図
- 半導体とは何か?
- 半導体はどうやって作られる?
- エッチング装置とは?――Wet・Dryの概要、比較、メリット・デメリット(親記事予定)
- Wet Etching装置とは?――薬液反応、方式、構造、制御(詳細記事予定)
- Dry Etching装置とは?――ガス、真空、プラズマ、構造、制御(詳細記事予定)
- CVDとは?(下層記事予定)
- 真空とは?(横断記事予定)
- RFとは?(下層記事予定)
- 半導体製造装置はどう制御されている?(横断記事予定)
- Dicerとは?(後工程装置記事予定)
- Die Bonder・Wire Bonderとは?(後工程装置記事予定)
- Flip Chip Bonderとは?(先端実装記事予定)
参考資料
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