eLEAPとは?――FMMを使わずフォトリソでOLED画素を形成する技術

JDIの次世代OLED技術eLEAPについて、従来のFMM蒸着との違い、マスクレス蒸着とフォトリソによる画素形成、利点と量産上の確認点を整理する。

公開 2026/8/28 確認 2026/8/28 読了 9分 入門 執筆: 知識図書館 編集部

この記事の結論

  • eLEAPはJDIが開発した、FMMを使わずマスクレス蒸着とフォトリソでOLED画素を形成する技術
  • FMMの開口・たわみ・大型化制約を避け、発光面積、高精細化、形状自由度を高める狙いがある
  • 性能値はJDIの公表条件に基づくため、製品条件、歩留まり、Costを含めて評価する必要がある

まず結論

eLEAPは、Japan Display Inc.(JDI)が開発したOLEDの画素形成技術です。従来広く使われるFine Metal Mask(FMM)越しの選択蒸着ではなく、有機材料をFMMなしで成膜し、PhotolithographyでOLED画素をPatterningすることが基本的な違いです。

名称は、JDIによれば次の言葉から構成されています。

  • environment positive
  • Lithography with maskless deposition
  • Extreme long life, low power, and high luminance
  • Any shape Patterning

eLEAPは一般的なOLED方式の総称ではなく、JDIの固有技術・名称です。

従来FMM方式とは

Mobile向けOLEDなどでは、Red、Green、Blueの有機材料をFine Metal Maskの微細な開口を通して蒸着し、Subpixelごとに塗り分ける方式が使われています。

FMMは薄い金属板なので、大型化すると自重や張力、熱で位置が変化しやすくなります。また、Mask開口と基板の隙間による蒸着の広がり、Maskへ付着する材料、Mask洗浄なども管理対象です。

eLEAPは何を変えるのか

eLEAPではFMMで蒸着位置を直接選ぶのではなく、マスクレスで有機材料を成膜し、Photolithographyを使って必要な画素形状を作ります。

従来FMM方式では金属マスクの開口を通して有機材料を選択蒸着し、eLEAPではマスクレス成膜後にフォトリソグラフィでOLED画素を形成する違いを示す比較図
図1 FMMは蒸着時に画素位置を決め、eLEAPはマスクレス成膜後のPhotolithographyで画素を形成する

Photolithographyを使うことで、Metal Maskの開口形状、たわみ、張力による制約を受けずにPixel形状を設計する狙いがあります。

FMM方式との比較

観点従来FMM蒸着eLEAP
画素の形成FMM開口を通して選択蒸着マスクレス成膜+Photolithography
主なPattern制約Mask開口、Shadow、たわみ、張力Resist、露光、現像、加工精度
大型化FMMの大型化・位置精度が課題Metal Mask由来の制約を回避
材料利用Maskにも材料が付着するFMM付着・洗浄を不要にする狙い
新たな管理点Mask製作・洗浄・Alignment有機層とLithography Processの両立

JDIが公表している特徴

JDIは、従来FMM方式と比較して発光面積を広げられると説明しています。公式情報では、300 ppi相当の同社比較で60%以上の開口率、2倍のPeak輝度または同輝度条件で3倍の寿命、高精細化、自由形状化、大型基板への展開可能性を掲げています。

これらはJDIが示した特定条件・同社比較による公表値です。すべての画面寸法、解像度、輝度、駆動条件で同じ倍率になるという意味ではありません。

発光面積が広いとなぜ有利か

同じPixel面積で発光する部分が広ければ、同じ画面輝度を得るために単位発光面積へ流す電流密度を下げられます。電流密度を抑えられれば、材料劣化と発熱を軽減し、寿命や消費電力を改善できる可能性があります。

反対に同程度の寿命条件で電流を増やせば、より高い輝度を狙えます。実際の効果は発光材料、TFT Backplane、補償回路、温度、表示内容にも左右されます。

大型化・高精細化との関係

FMMではMaskのたわみ、熱変形、開口精度、基板との位置合わせが大型化・高精細化を難しくします。eLEAPはFMMを使わないため、Photolithography装置の露光精度と大型基板補正を使ってPatternを作れます。

JDIは800 ppiを超える高精細化や、第8世代以上の基板Lineへの展開可能性を説明しています。ただし、大型基板では露光だけでなく、膜厚、温度、Etching、洗浄、基板搬送、欠陥検査の全面均一性が必要です。

量産技術として確認すべき点

eLEAPの評価では、性能値だけでなく次の点も見る必要があります。

  • 有機発光層を損傷させずにResist塗布・露光・現像・加工できるか
  • RGB各層のPattern精度と重ね合わせ
  • Particle、残渣、膜欠陥、画素欠陥
  • 大型基板全面の寸法・膜厚均一性
  • 工程数、Cycle Time、材料利用率、装置Cost
  • Panel歩留まりと長期信頼性

技術原理に利点があっても、量産Costと歩留まりは製品世代、設備、材料、製造規模によって変わります。

OLED工程のどこに位置するか

eLEAPは主にOLEDのFrontplane、つまりTFT Backplane上へ発光画素を形成する領域の技術です。TFT Arrayそのもの、封止、Driver IC、Module組立の全工程を置き換える名称ではありません。

したがって記事ツリーでは、OLEDの下にある「画素形成方式」の一つとして位置付けます。

よくある誤解

  • eLEAPはOLEDとは別の表示原理:有機発光材料を使うOLEDであり、画素形成方法が従来FMM方式と異なります。
  • Maskを一切使わない:FMMを使わないという意味です。Photolithographyでは露光Patternを定義する仕組みが必要です。
  • 公表された倍率が全製品で保証される:JDIの比較条件に基づく値であり、製品条件ごとの確認が必要です。

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参考資料

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