習い事は多いほどいいのか――子どもに『何を体験させるか』を考える

習い事を能力獲得だけでなく、興味や適性に出会う入口として捉え、数・時間・費用との釣り合いを考える。

公開 2026/8/13 確認 2026/8/13 読了 7分 一般 執筆: 知識図書館 編集部

この記事の結論

  • 習い事は能力を作るだけでなく、子どもが興味や適性を知る入口にもなる。
  • 課外活動への参加と良い結果には関連がある一方、多ければ多いほどよいという単純な証拠ではない。
  • 有料の習い事だけでなく、日常生活にも世界との接点を増やす体験がある。

英語、水泳、ピアノ、サッカー、プログラミング。

子どもの可能性を考えるほど、「やらせておいた方がいいもの」は増えていく。

親としては、後になって「小さい頃にやらせておけばよかった」と思いたくない。

では、多くの習い事を経験させるほど子どもの可能性は広がるのだろうか。

習い事の価値は「能力を作る」だけではない

習い事というと、上達を成果として考えやすい。

水泳なら泳げるようになる。ピアノなら弾けるようになる。英語なら英語力をつける。

もちろんそれも価値だ。

しかし、もっと手前に別の役割があるのではないか。

自分が何に反応する人間なのかを知ること。

サッカーをやって初めて、球技が好きだと分かる。

ピアノをやって、音楽は好きだが練習は嫌いだと分かる。

工作教室へ行って、物を作ることに異常なほど集中する自分を知る。

やってみなければ、好きか嫌いかすら分からない。

そう考えると、幼少期の習い事は「得意を作る装置」であると同時に、得意や興味を発見するための試着室でもある。

では、とにかく数を増やせばよいのか

ここで量の問題が出てくる。

課外活動への参加が直ちに「過密スケジュールによる悪影響」を生むとは限らず、研究では課外活動参加と良好な学業・発達指標との関連も報告されている。

一方で、活動を増やせば時間は必ず減る。

週5日習い事をすれば、自由遊び、家族との時間、何もしない時間も減る。

だから「習い事は多いほどよい」という単純な式にはならない。

重要なのは、数よりも、

その体験が本人の世界を広げているか。

だと思う。

「経験の点」を増やす

以前の記事で、思考力を「記憶と記憶を結びつける働き」と考えた。

この見方なら、子どもに多様な経験を与える意味が見えてくる。

スポーツ。

音楽。

自然。

料理。

工作。

旅行。

買い物。

動物。

機械。

本。

人との会話。

どれが将来役に立つかは分からない。

むしろ、その時点で役に立つかどうかを判断する必要もない。

後に学校で何かを学んだとき、「これ知っている」「あの時のあれか」と接続する材料になるかもしれない。

だから体験の目的は、履歴書を埋めることではない。

世界にどんなものが存在するのかを、子どもの中へ置いていくことだと考えたい。

習い事でなくても体験は作れる

ここは重要である。

「多様な経験が重要」と言うと、教育費の話になりやすい。

しかし、体験は有料サービスだけではない。

一緒に料理する。

ホームセンターへ行く。

電車に乗る。

畑を見る。

川へ行く。

親の仕事の話を聞く。

壊れた家電の中を見る。

図書館で知らない棚を歩く。

1000円を渡して自分で買い物させる。

こうした日常も立派な経験になる。

教育機会を「習い事の数」で数える必要はない。

続けることと、やめること

習い事を始めると、今度は「すぐやめさせてよいのか」という問題が出る。

何でも嫌になったら即座にやめれば、少し難しくなっただけで撤退する習慣になるかもしれない。

一方、本人が明らかに興味を失っているのに「継続は力なり」だけで何年も続ければ、別の経験へ使えた時間を失う。

ここには一律の正解はない。

ただ、幼少期の習い事を「将来の職業訓練」ではなく「世界を試す期間」と考えるなら、やめることも一つの情報獲得になる。

「これは自分には合わなかった」と知ることも、自分を知ることである。

親が用意し、子どもが選んでいく

子どもは知らないものを選べない。

水泳を知らなければ、水泳が好きかどうかも分からない。

だから幼い時期には、親がいくつかの入口を作る必要がある。

しかし入口を作ることと、進む道を決めることは違う。

親が世界を見せる。

子どもが反応する。

反応したものには、もう少し深く触れさせる。

反応しなければ、別のものも見せる。

この繰り返しでよいのではないか。

親がすべての可能性を育てるのではなく、可能性に出会える場所まで連れていく。

習い事も体験も、そのための手段の一つだと考えたい。

参考研究

  • Fredricks JA. Extracurricular participation and academic outcomes: testing the over-scheduling hypothesis. Journal of Youth and Adolescence. 2012.

更新履歴

  • 2026/8/13:初版公開。課外活動と過密スケジュール仮説の研究を確認。

参考資料

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