緑茶は体を冷やし、紅茶は体を温めるって本当?

緑茶と紅茶を、冷却・加温と単純に二分する強い根拠はありません。同じ茶葉から分かれる製法と成分、深部体温・皮膚温・温冷感の違いを解説します。

公開 2026/8/12 確認 2026/8/12 読了 7分 初級 執筆: 知識図書館 編集部

この記事の結論

  • 緑茶と紅茶は同じチャノキの葉から作られるが、酸化工程の違いでポリフェノール組成などが変わる。
  • 緑茶を冷却、紅茶を加温とする単純な二分法を、現代生理学の深部体温変化として裏付ける強い根拠は確認できない。
  • 飲用後の温冷感、飲料温度、皮膚温、血流、代謝、深部体温は区別して考える必要がある。

昔から、

「緑茶は体を冷やす」
「紅茶は体を温める」

と言われることがあります。

東洋医学では食品を「体を温めるもの」「冷やすもの」に分類する考え方があります。

しかし緑茶と紅茶は、そもそも同じチャノキ Camellia sinensis の葉から作られます。

同じ植物なのに、本当に体温への作用が逆になるのでしょうか。


結論:単純に「緑茶=冷却、紅茶=加温」とは言えない

同じチャノキの葉から、酸化酵素を早く止めると緑茶、酸化を進めると紅茶になる製造工程図
図1 緑茶と紅茶は同じ茶葉から製法の違いで分かれる

現代の生理学的な意味で、

緑茶を飲むと体を冷やし、紅茶を飲むと体を温める

という単純な二分法を裏付ける強い根拠があるわけではありません。

ただし、お茶に含まれる成分が、

  • 自律神経
  • 血流
  • 代謝
  • 熱産生

などに影響する可能性はあります。

つまり、

「お茶が体温調節に全く関係しない」わけでもない

のです。


緑茶と紅茶は何が違う?

最大の違いは製造方法です。

緑茶では摘んだ茶葉を早い段階で加熱し、酵素の働きを止めます。

一方、紅茶では茶葉を揉み、茶葉に含まれる成分を酵素によって酸化させます。

一般に「発酵」と呼ばれる工程ですが、ヨーグルトなどの微生物発酵とは少し意味が違います。

この工程によってカテキン類が変化し、

テアフラビンやテアルビジン

など紅茶特有の成分が生じます。

つまり原料は同じでも、飲む時点での化学組成は同一ではありません。


カフェインは体を冷やすのか、温めるのか?

ここが面白いところです。

カフェインには中枢神経を刺激する作用があり、交感神経系にも影響します。

代謝や熱産生にも作用するため、

カフェイン=体を冷やす物質

と単純には言えません。

むしろ条件によってはエネルギー消費や熱産生を増加させる方向に働きます。


緑茶のカテキンは?

緑茶にはカテキン類が比較的多く残っています。

カテキンとカフェインの組み合わせについては、エネルギー消費や脂質代謝との関連が研究されています。

ここでも、

緑茶だから体温を下げる

という単純な話にはなりません。

成分だけを見ると、むしろ代謝を介した熱産生という方向の作用も考えられます。


「温かく感じる」と「深部体温が上がる」は別

飲料の温度、温冷感、皮膚温、血流、代謝、深部体温が同じ指標ではないことを示す図
図2 「体を温める」に含まれ得る別々の現象

この話では、

体温

という言葉そのものにも注意が必要です。

例えば温かい紅茶を飲めば、口、喉、胃の周辺では当然温かさを感じます。

皮膚血流が変化すれば、手足が温かく感じることもあります。

しかし、

「温かく感じる」ことと「深部体温が持続的に上昇する」ことは同じではありません。

逆も同じです。

手足が冷たく感じても、体の中心部の温度まで同じように下がっているとは限りません。


では東洋医学の話は全部間違い?

そこまで単純でもありません。

昔の人が、

  • 発汗
  • 手足の感覚
  • 胃腸の反応
  • 排尿
  • 飲んだ後の体感

などを長い経験から分類していた可能性はあります。

ただし、

その経験的分類と、現代医学における深部体温の上昇・下降を同一視することはできません。

ここを分けると理解しやすくなります。


結局、緑茶と紅茶は?

Q. 緑茶は体を冷やす?
→ 現代科学として「緑茶だから体温を下げる」と単純には言えない。

Q. 紅茶は体を温める?
→ 同様に、紅茶だから深部体温を持続的に上げると単純には言えない。

Q. では何も違わない?
→ 違う。製造時の酸化によってポリフェノール組成などが変化する。

Q. お茶の成分は体温調節に関係する?
→ カフェインや茶ポリフェノールは代謝、自律神経などに影響し得る。


「体を温める」という言葉が曖昧だった

この雑学のポイントは、

緑茶と紅茶のどちらが温かいか

よりも、

そもそも「体を温める」とは何を意味しているのか?

というところにあります。

深部体温なのか。

皮膚温なのか。

血流なのか。

代謝なのか。

それとも本人の温冷感なのか。

ここを区別せずに「○○は体を冷やす」と表現すると、科学的な議論と昔からの経験則が混ざってしまいます。

同じ茶葉から生まれる緑茶と紅茶。

その違いを考えると、食品について語られる「体を温める・冷やす」という言葉そのものを考え直すきっかけになります。

更新履歴

  • 2026/8/12:農林水産省資料とヒト試験を確認して初版公開。

参考資料

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