熱はなぜ出るのか?――発熱は身体にとって敵なのか味方なのか

発熱のセットポイント、サイトカイン、プロスタグランジン、悪寒と解熱の仕組みを解説し、高体温症との違いを整理する。

公開 2026/9/2 確認 2026/9/2 読了 7分 一般 執筆: 知識図書館 編集部

この記事の結論

  • 発熱は、免疫シグナルによって脳の体温設定値が引き上げられて起こります。
  • 悪寒は設定値まで体温を上げる反応で、解熱時の発汗は熱を逃がす反応です。
  • 発熱と、熱中症などで体温調節が破綻する高体温症は仕組みも緊急性も異なります。

風邪をひくと寒気がして震えているのに、体温を測ると38℃ある。この一見矛盾した現象は、発熱の仕組みを知ると理解できる。

発熱では単に身体が熱くなっているのではない。脳が「目標体温」を一時的に高く設定し直している。

体温を決める「設定値」

感染から視床下部の体温設定値上昇までの経路

体温は視床下部を中心とした体温調節系によって維持される。

感染症などで免疫細胞が活性化するとIL-1、IL-6、TNFなどのサイトカインが関与し、最終的にプロスタグランジンE2(PGE2)が体温調節系へ作用する。すると目標とする体温のセットポイントが上昇する。

38℃なのに寒い理由

たとえば現在の体温が37℃なのに、脳が目標を39℃へ変更したとする。

脳から見れば身体は「2℃も冷たい」。そこで皮膚血管を収縮させて熱を逃がさず、筋肉を震わせて熱を作る。本人は寒気を感じ、布団に入りたくなる。

これが悪寒である。

熱が下がると汗をかく理由

発熱の上昇期・維持期・解熱期の比較

免疫反応が収束したり解熱薬が作用したりしてセットポイントが37℃へ戻ると、今度は実際の体温が高すぎる状態になる。

身体は血管を広げ、発汗し、熱を外へ逃がす。

発熱の上がり始めに寒く、下がり始めに暑くなるのはこのためだ。

発熱と高体温症は別物

発熱と高体温症の仕組みの違い

ここは非常に重要である。

発熱ではセットポイント自体が上がっている。一方、熱中症などの高体温症では設定値を上げていないのに、外部からの熱や熱産生が放熱能力を上回り、体温が上昇する。

同じ「40℃」でも生理学的には別の状態であり、高体温症は速やかな冷却などが必要になることがある。

発熱には意味があるのか

発熱は感染防御反応の一部である。温度上昇によって一部の免疫反応が促進され、一部の微生物の増殖条件が悪くなる可能性がある。

だからといって「熱は絶対に下げてはいけない」という結論にはならない。

解熱剤は何のために使うのか

解熱剤の目的は数字としての体温を正常化することだけではない。痛み、頭痛、だるさ、睡眠不足、水分摂取低下などを軽減し、本人を楽にする意味が大きい。

高熱そのものより、呼吸状態、意識、水分摂取、循環など全身状態が重要な場合も多い。

子どもの熱で注意したい考え方

子どもでは高熱だけで重症度を判断できない。軽い感染でも高熱になることがある一方、重い病気でも必ず高熱になるとは限らない。

年齢、機嫌、呼吸、皮膚色、水分摂取、尿、意識状態、けいれんなどを総合して評価する必要がある。

乳児、特に月齢の低い乳児の発熱は年長児とは別に評価されるため、医療機関への相談が重要である。

41℃を超える体温はどうなのか

通常の感染症による発熱は身体の調節機構の範囲内で起きることが多い。一方、極端な高体温ではタンパク質機能や細胞機能が障害され、多臓器障害につながりうる。

ここでも感染症の発熱と熱中症などの高体温症を混同しないことが重要になる。

まとめ

発熱とは「身体が病気に負けて熱くなっている」だけではない。

免疫系から脳へ情報が伝わり、体温の目標値が意図的に引き上げられた結果である。悪寒、震え、発汗という一見ばらばらな症状は、すべてその設定値の変化で説明できる。

熱そのものを敵と見るのではなく、身体が何に反応しているのか、そして全身状態がどうなっているのかを見ることが大切である。

関連記事

参考資料

更新履歴

  • 2026/9/2:受領原稿を現行の記事スキーマへ変換し、人体・医学カテゴリの基礎記事として公開。

次に読む記事