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「10000mAhなら5000mAhのスマホを2回充電できる」
直感的にはそう思えます。
しかし実際には、ほぼ必ず2回未満です。
理由は、モバイルバッテリー内部のセル電圧とUSB出力電圧が違い、昇圧・降圧変換にも損失があるからです。
モバイルバッテリーはmAhよりWhで考えると理解しやすくなります。
1. mAhとは何か
mAhは電荷量です。
10000mAh = 10Ah。
しかしAhだけではエネルギー量は分かりません。
エネルギーはおおよそ、
Wh = V × Ah
で考えます。
2. 10000mAhの正体
モバイルバッテリーの10000mAhは、内部リチウムイオンセルの公称電圧3.6〜3.7V付近を基準に表記されることが一般的です。
3.7V・10Ahなら、
3.7V × 10Ah = 37Wh
です。
つまり10000mAhモデルの内部エネルギーは概ね37Wh級です。
3. USB出力は5V――だからmAhをそのまま移せない
37Whを理想的に5Vへ変換した場合、
37Wh ÷ 5V = 7.4Ah
つまり7400mAh相当です。
この時点で「5V基準なら10000mAhではない」ことが分かります。
さらに変換損失があります。
仮に効率85%なら、
37Wh × 0.85 = 31.45Wh
5V換算では、
31.45Wh ÷ 5V = 6.29Ah
約6290mAh相当です。
4. では5000mAhスマホを何回充電できる?
スマホ側もmAhではなくWhへ変換します。
例えば5000mAh、平均セル電圧3.85Vなら、
5Ah × 3.85V = 19.25Wh
10000mAhモバイルバッテリーが37Whで、実効85%なら31.45Wh。
単純計算では、
31.45 ÷ 19.25 ≒ 1.63回
程度です。
実際にはスマホ側充電回路にも損失があるため、さらに少なくなることがあります。
したがって、
10000mAh ÷ 5000mAh = 2回
という計算は正しくありません。
5. 「定格容量」を見る
日本向け製品では容量表示のほか、出力条件に応じた定格容量が記載される製品があります。
例:
- 電池容量:10000mAh
- 定格容量:6000mAh(5V出力条件)
のような表記です。
実際にUSB出力として取り出せる量を考えるには、電池容量より定格容量が参考になります。
6. Whで比較すると電圧違いを吸収できる
mAhだけで比較すると、
- 3.7V 10000mAh
- 7.4V 5000mAh
が違う容量に見えます。
しかしWhでは、
3.7 × 10 = 37Wh
7.4 × 5 = 37Wh
で同じエネルギー量です。
バッテリー製品ではWhを理解すると比較が急に簡単になります。
7. 出力Wは「速く充電できるか」
容量Whと出力Wは別です。
- Wh:どれだけ蓄えているか
- W:どれだけ速く出せるか
10000mAhでも最大10Wなら充電は遅い。
5000mAhでも最大45Wなら短時間で高速充電できます。
ただし端末側が45Wを受けられる必要があります。
8. USB PDとPPS
近年のモバイルバッテリーではUSB PD対応が重要です。
スマートフォンやタブレット、ノートPCと高出力で通信できます。
PPS
端末が細かく電圧を要求できる方式。
PPS対応スマホでは発熱を抑えながら高速充電しやすくなります。
「PD 30W」と「PD/PPS 30W」は用途によって差があります。
9. 入力Wも重要
モバイルバッテリー自身を充電する速度はInputを見ます。
20000mAh製品でも入力10Wなら満充電まで長時間かかります。
例えば74Wh級を10Wで理想充電しても、
74Wh ÷ 10W = 7.4時間
です。
実際には損失や充電終盤の電流低下があるためさらに長くなります。
65W入力対応なら大容量モデルでも短時間化できます。
10. パススルー充電
モバイルバッテリーを充電しながら、同時にスマホへ給電する機能です。
便利ですが、
- 発熱
- 電池への負担
- 入出力配分
- UPSとしての切替性能
は製品ごとに違います。
「パススルー対応」だけで常時UPS用途に使えるとは限りません。
11. リチウムイオンとリチウムポリマー
「Li-ion」と「Li-polymer」は商品上別カテゴリとして扱われますが、どちらもリチウムイオン二次電池の系統です。
ポリマー系はパウチ形状など自由度が高く、薄型化しやすい設計があります。
しかし、
Li-polymerだから絶対安全 Li-ionだから危険
とは言えません。
セル品質・BMS・充電制御・筐体設計が重要です。
12. BMSは何をしているのか
Battery Management Systemは、
- 過充電
- 過放電
- 過電流
- 短絡
- 温度異常
などを監視します。
高品質なモバイルバッテリーではセルだけでなくBMS設計が安全性を左右します。
13. リチウムイオン電池はなぜ劣化する
充放電を繰り返すと、
- SEI層成長
- 活物質劣化
- 電解液反応
- リチウム損失
などが進み、容量が低下します。
劣化を強めやすい代表条件は、
- 高温
- 高SOCの長期保管
- 深い充放電
- 大電流
です。
14. 100%で放置すると何が起こる
満充電に近い高電圧状態では電池内部の副反応が進みやすくなります。
毎日使うなら満充電しても問題ありませんが、数か月保管するなら満充電・高温放置を避ける方が寿命には有利です。
メーカー推奨の保管SOCがある場合は従います。
15. 高温は特に避ける
夏の車内は非常に高温になります。
リチウムイオン電池は高温で劣化が加速し、異常時の安全余裕も小さくなります。
モバイルバッテリーを真夏の車内へ長時間放置しないことは重要です。
16. 膨張したら使わない
パウチセルなどが膨らんだ場合、内部でガス発生が起きている可能性があります。
- 押し戻す
- 穴を開ける
- そのまま充電する
のは避けます。
自治体や販売店の回収ルールに従います。
17. PSEは必ず確認
日本ではモバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象です。
国内販売品ではPSE表示を確認します。
PSEは、
「事故が絶対起きない」
という保証ではありません。
ただし国内で適法に販売される製品として最低限確認すべき項目です。
18. 飛行機はmAhではなくWhを見る
航空輸送ではバッテリー容量をWhで扱います。
したがって「20000mAhだからOK」という判断ではなく、
Wh = V × Ah
で確認します。
航空会社・国際航空規則によって持込条件が定められ、変更される可能性もあるため、旅行直前に利用航空会社の最新条件を確認します。
モバイルバッテリーは通常、預け荷物ではなく機内持込扱いになる点にも注意します。
19. ノートPCを充電するなら見る数字が変わる
ノートPC用なら、
- 45W
- 65W
- 100W
など高出力が必要になります。
容量も10000mAhより20000mAh級の方が実用的です。
ただし容量が大きくなるほど、
- 重量
- サイズ
- 充電時間
も増えます。
20. 容量の目安
日帰り・スマホ1台
5000〜10000mAh級。
旅行・スマホ複数回
10000〜20000mAh級。
タブレット・ノートPC
20000mAh級以上を検討。
ただし最終的にはmAhよりWhと出力Wを見ます。
21. 同じ20000mAhでも「使える量」は違う
実効容量は、
- DC-DC効率
- 出力電圧
- 負荷電流
- 温度
- セル品質
- BMS制限
で変わります。
したがって実測容量レビューではWh基準を見ると比較しやすくなります。
22. ワイヤレス充電内蔵モデル
Qi系ワイヤレス給電では、
- コイル位置
- 発熱
- 変換効率
により有線より損失が大きくなりやすいです。
便利さを優先する機能であり、同じ電池容量なら有線給電より充電回数は減る傾向があります。
23. 過剰性能になりやすいところ
旅行しないのに30000mAh級
重くなります。
スマホ用なのに100W出力
端末が30Wまでなら使い切れません。
容量だけを追う
持ち運ばなくなれば意味がありません。
24. 結局どこを見る?
①必要なWh → ②重量 → ③端末が受けられるW → ④PD/PPS → ⑤入力W → ⑥定格容量・実効効率 → ⑦PSE → ⑧保護機能
の順です。
モバイルバッテリーでは「10000mAh」という数字を、そのままスマホへ移せる容量だと思わないことが最初のポイントです。
購入直前チェックリスト
- mAhだけでなくWhを確認した
- 内部セル電圧とUSB出力電圧が違うと理解した
- 10000mAh÷スマホmAhで充電回数を計算していない
- 定格容量・実効容量を確認した
- 端末に必要なUSB PD/PPS出力がある
- 本体入力Wを確認した
- 複数ポート時の出力配分を確認した
- PSE表示を確認した
- 高温車内へ放置しない
- 膨張・異臭・異常発熱があれば使用を中止する
- 飛行機利用時はWhと航空会社の最新規則を確認する
- ノートPC用なら必要W数を確認した
参考資料
- USB Implementers Forum, USB Power Delivery Specification
- 経済産業省, 電気用品安全法
- IEC/航空輸送規則におけるリチウム電池のWh表記