知識図書館は商品を選ばない。選べる知識を提供する。
PCモニターは「4K」「240Hz」「HDR」「99% DCI-P3」といった数字で比較されます。
しかし、
- 24インチFHD
- 27インチWQHD
- 27インチ4K
- 32インチ4K
では、同じ解像度でも見え方が違います。
モニターは画面サイズ・解像度・視聴距離・パネル方式・応答・明暗・色・インターフェースを組み合わせて考える必要があります。
1. 解像度だけではなくPPIを見る
PPI = Pixels Per Inch。
1インチあたり何画素あるかです。
計算は、
PPI = √(横画素² + 縦画素²) ÷ 画面インチ
です。
代表例:
| サイズ・解像度 | PPI目安 |
|---|---|
| 24型 FHD 1920×1080 | 約92 |
| 27型 WQHD 2560×1440 | 約109 |
| 27型 4K 3840×2160 | 約163 |
| 32型 4K 3840×2160 | 約138 |
同じ4Kでも27インチの方が32インチより画素密度が高くなります。
2. PPIが高いほど文字は小さくなる
Windows等で100%表示すると、高PPIほどUIは物理的に小さくなります。
27インチ4Kでは150%前後のScalingを使う人が多いです。
その代わり文字の輪郭が滑らかになります。
事務用途
100〜140PPI程度でも十分見やすい。
写真・デザイン
高PPIの恩恵が大きい。
ゲーム
GPU負荷とのトレードオフがあります。
3. 視聴距離で必要解像度は変わる
画素が見えるかどうかはPPIだけでなく視聴距離で決まります。
近くで見るほど高PPIが有利です。
デスク上のPCモニターはテレビより近距離なので、27型4Kの精細さを感じやすいです。
一方、32型4Kは文字サイズと作業領域のバランスが良くなります。
4. 24・27・32インチの使い分け
24インチ
- 机が小さい
- FHDで十分
- 競技ゲーム
27インチ
最も万能。
- WQHD
- 4K
- 144Hz
など選択肢が多い。
32インチ
- 4Kとの相性が良い
- 大画面作業
- 映像
- CAD
向き。
5. リフレッシュレートHzとは
1秒間に画面を書き換える回数です。
- 60Hz:16.7ms/フレーム
- 120Hz:8.3ms
- 144Hz:6.9ms
- 240Hz:4.2ms
60Hzから120/144Hzへの差は操作感で感じやすいです。
一方144Hzから240Hzは差が小さくなり、競技ゲームで意味が大きくなります。
6. 240Hzを使うにはPC側も240fps必要
モニターが240Hzでもゲームが80fpsしか出なければ、240Hzを十分活かせません。
必要なのは、
- GPU性能
- CPU性能
- ゲーム設定
- 解像度
です。
4K 240HzはGPU負荷が非常に高い組み合わせです。
7. 応答速度GtGとMPRT
GtG
Gray to Gray。
画素がある階調から別の階調へ変化する時間。
MPRT
Moving Picture Response Time。
動く物体の残像知覚を評価する考え方。
この2つは同じ数字ではありません。
「1ms」と書かれていても、
- GtG最速値
- Overdrive最大
- MPRT
など測定条件が違うため単純比較できません。
8. Overdriveで速くすると逆残像が出る
液晶の応答を速めるため、目標電圧を一時的に超えて駆動するOverdriveがあります。
強すぎるとOvershootが起き、
- 明るい縁
- 暗い縁
など逆残像が見えます。
したがって「最速モード1ms」より、適切なOverdrive設定での実測応答を見る方が重要です。
9. IPS・VA・TN・OLED
IPS
- 視野角が広い
- 色安定性
- 万能
一方、黒が浮きやすくコントラストは1000:1前後の製品が多いです。
VA
- 高コントラスト
- 黒が深い
3000:1以上の製品も多い。
ただし暗部応答が遅い製品では黒い残像が出ることがあります。
TN
- 高速
- 安価
視野角・色で不利。
競技ゲーム向けで残っています。
OLED
各画素が自発光。
- 黒0に近い
- 応答が非常に速い
- HDR
- 高コントラスト
に強い。
一方、
- 焼き付き
- ABL
- 文字表示特性
- 価格
を考える必要があります。
10. コントラスト比
白と黒の輝度比です。
例:
白100cd/m²、黒0.1cd/m²なら、
100 ÷ 0.1 = 1,000:1
です。
映画や暗室では重要。
IPSの1000:1とVAの3000:1では暗部の見え方に差が出やすいです。
OLEDは黒がほぼ0なので実質的に非常に高いコントラストを持ちます。
11. 輝度cd/m²
画面の明るさ。
一般事務では、
- 100〜200cd/m²
程度でも十分なことが多いです。
明るい部屋では250〜350cd/m²以上が便利。
HDRではより高いピーク輝度が重要になります。
12. HDR対応だけでは意味が薄い
HDR信号を受けられるだけのモニターもあります。
HDR画質には、
- 高輝度
- 低い黒
- 広色域
- Local Dimmingまたは自発光
- 10bit級階調
が重要です。
「HDR10入力対応」だけでは画質を保証しません。
13. DisplayHDR
VESA DisplayHDRはHDR性能を一定条件で分類する認証です。
DisplayHDR 400/500/600/1000等があります。
数字が大きいほどピーク輝度等の要求が上がります。
ただし同じDisplayHDR等級でも、
- Mini LED
- OLED
- Edge LED
では黒表現が大きく違います。
14. Local Dimming
LCDではBacklightを複数領域へ分け、暗部を消灯します。
ゾーン数が多いほど細かく制御できます。
Mini LEDでは数百〜数千ゾーンを持つ製品があります。
ただし物体周辺が光るBloomingは残ります。
OLEDは画素単位で発光制御できます。
15. 色域――sRGB・DCI-P3・Adobe RGB
sRGB
Web・一般PCの基準。
DCI-P3
映画・HDR系で広い。
Adobe RGB
印刷・写真用途で重要。
「DCI-P3 95%」は色域の広さを表しますが、色の正確さとは別です。
16. ΔEとは
色差の指標。
小さいほど基準色に近い。
一般的な目安として、
- ΔE < 3:十分良好
- ΔE < 2:色制作向け
- ΔE < 1:差を見分けにくい水準
とされることがあります。
ただし測定法・平均値/最大値を確認します。
17. 8bit・10bit・FRC
8bit/色なら、
2⁸ = 256段階
RGB全体では約1677万色。
10bit/色なら、
2¹⁰ = 1,024段階
約10.7億色。
グラデーション表現に有利です。
8bit+FRC
時間方向に2色を切り替え、中間色を疑似表現します。
実用上十分優秀な製品も多いです。
「True 10bitか8bit+FRCか」は制作用途で確認します。
18. PWM調光とフリッカー
LED Backlightを高速ON/OFFして明るさ調整する方式があります。
周波数が低いと人によって眼精疲労を感じる場合があります。
「Flicker-Free」製品ではDC調光または高周波PWMを使うことがあります。
ただしメーカー定義は確認が必要です。
19. FreeSync・G-SYNC Compatible
GPUのfpsとモニターのHzを同期させるVRR技術です。
固定60HzでGPUが73fpsなどになるとTearingが起こり得ます。
VRRでは表示タイミングを合わせます。
重要なのは対応レンジ。
例:
- 48〜144Hz
なら48fps未満でLFC等の挙動が関係します。
20. HDMI・DisplayPortは帯域を見る
4K/144Hzや4K/240Hzでは大きな帯域が必要です。
HDMI/DisplayPortは「端子形状」だけでなくVersionと実装帯域が重要です。
さらに、
- DSC
- chroma subsampling
- bit depth
によって必要帯域が変わります。
「HDMI 2.1端子がある」だけで全機能を保証しません。
21. USB-C映像出力
USB-C一本で、
- DisplayPort Alt Mode
- USB Data
- USB PD給電
をまとめられるモニターがあります。
ノートPC用途では非常に便利。
重要なのはPD出力。
- 65W
- 90W
- 100W
などを確認します。
高性能ノートPCでは不足する場合があります。
22. 用途別の選び方
事務
- 27型 WQHD
- 60〜120Hz
- IPS
- USB-C
が使いやすい。
ゲーム
- 144〜240Hz
- 低応答
- VRR
- 入力遅延
- GPU性能との整合
写真
- 4K
- sRGB/Adobe RGB
- ΔE
- Hardware Calibration
動画・HDR
- 4K
- DCI-P3
- 高輝度
- Local Dimming/OLED
- HDR認証
23. 過剰性能になりやすいもの
4K 240Hz
事務用途ではほぼ不要。
100% Adobe RGB
Web用途だけなら不要。
HDR400
HDR入力には対応しても、本格HDRを期待すると弱い場合があります。
24. 結局どこを見る?
①サイズ → ②解像度/PPI → ③視聴距離 → ④Hz → ⑤パネル方式 → ⑥応答 → ⑦コントラスト/HDR → ⑧色域/ΔE → ⑨端子帯域
の順です。
PCモニターは「4K」「240Hz」だけでなく、自分の用途に必要な画質とGPU負荷のバランスで選びます。
購入直前チェックリスト
- 画面サイズとPPIを確認した
- Scaling前提で4Kを選ぶか確認した
- GPUが必要fpsを出せる
- Hzだけでなく応答速度の実測を確認した
- GtGとMPRTを区別した
- IPS/VA/TN/OLEDの特徴を理解した
- コントラスト比と黒性能を確認した
- HDR入力対応だけで判断していない
- 色域とΔEを分けて見た
- 8bit/10bit/FRCを確認した
- VRRレンジを確認した
- HDMI/DPの実帯域を確認した
- USB-CならPD給電W数を確認した
参考資料
- VESA, DisplayHDR
- VESA, DisplayPort
- HDMI Forum/HDMI Licensing specifications