NASの選び方|RAID・2.5GbE・HDD容量・バックアップを数字から理解する

NASは『何TB入るか』だけで選ぶと失敗します。1/2/4ベイ、RAID 0/1/5/6/10、実効容量、1/2.5/10GbE、CPU・メモリ、トランスコード、消費電力、UPS、3-2-1バックアップまで整理します。

公開 2026/9/8 確認 2026/9/9 読了 17分 入門 執筆: 知識図書館 編集部

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NASはNetwork Attached Storage、つまりネットワークにつながったストレージです。

「写真を家族で共有したい」「PCを自動バックアップしたい」「動画をテレビから見たい」といった用途では非常に便利ですが、選び方を間違えると、

  • 容量が足りない
  • 転送速度が遅い
  • RAIDを組んだのにデータを失う
  • CPUが弱くアプリが重い
  • 10GbEを買ったのに100MB/sしか出ない

といったことが起こります。

NASは単なるHDDケースではありません。ストレージ・ネットワーク・小型サーバーの三つを一体化した機器です。


1. NASと外付けHDDは何が違う

外付けHDDはUSBで1台のPCへ直接つなぐのが基本です。

NASはLANへ接続し、複数端末からアクセスします。

外付けHDD

  • 安い
  • 単純
  • USB接続したPC中心
  • 高速なUSB接続なら速度を出しやすい

NAS

  • 家中のPC・スマホ・テレビからアクセス
  • 24時間運用可能
  • RAID
  • 自動バックアップ
  • 写真管理
  • 監視カメラ
  • Docker/VM

など、サーバー機能を持てます。


2. 1ベイ・2ベイ・4ベイは何が違う

「ベイ」はHDD/SSDを何台入れられるかです。

1ベイ

安価ですが、HDD故障時に冗長性がありません。

2ベイ

家庭向けで最も使いやすい構成。

RAID1で同じデータを2台へ保存できます。

4ベイ以上

RAID5/6/10などを使いやすく、

  • 大容量
  • 高性能
  • 拡張性

に優れます。

ただし本体価格・消費電力・HDD費用も増えます。


3. RAIDとは何か

RAIDは複数ドライブを組み合わせて、

  • 容量
  • 速度
  • 冗長性

を調整する仕組みです。

RAID0

複数HDDへデータを分散。

容量は合計。

例: 8TB × 2台 → 約16TB

速度は上げやすいですが、どちらか1台が壊れると全体を失う可能性があります。

家庭の大切な写真保存には通常向きません。

RAID1

同じデータを2台へ保存。

8TB × 2台 → 実効約8TB

1台故障しても運用を継続できます。

RAID5

3台以上で使用。

1台分を冗長性に使います。

8TB × 4台なら概念的には、

8TB × (4 − 1) = 24TB

程度がデータ領域になります。

1台故障まで耐えられます。

RAID6

2台分を冗長性に使います。

8TB × 4台なら概念的には、

8TB × (4 − 2) = 16TB

程度。

同時2台故障まで耐えられます。

RAID10

ミラーとストライピングを組み合わせます。

4台で容量は概ね半分。

性能と冗長性の両立に向きます。


4. RAIDはバックアップではない

ここが最重要です。

RAID1で2台に同じデータが入っていても、

  • 間違って削除
  • ランサムウェア
  • NAS本体故障
  • 落雷
  • 火災
  • 盗難
  • ファイルシステム破損

では、両方同時に失うことがあります。

RAIDは主にドライブ故障時に止めないための冗長化です。

バックアップは別に必要です。


5. 3-2-1バックアップ

代表的な考え方が3-2-1です。

  • データを3コピー
  • 2種類以上の媒体
  • 1コピーは別場所

例えば、

  1. PC本体
  2. NAS
  3. クラウド

のようにします。

家族写真など失えないデータでは、NASだけで完結させない方が安全です。


6. TB表記と実際の表示容量が違う理由

ストレージメーカーは10進法で、

1TB = 10¹²byte

と表記します。

一方OSでは2進系表示を使う場合があり、1TiBは、

2⁴⁰byte

です。

そのため8TB HDDがOS上で約7.27TiB相当に見えることがあります。

さらにNASでは、

  • RAID
  • ファイルシステム
  • システム領域

で実効容量が減ります。


7. NAS向けHDDとは

NAS向けHDDは一般デスクトップHDDに比べ、

  • 長時間稼働
  • 複数台振動
  • RAID運用
  • エラーリカバリ特性

を想定した設計が多いです。

「NAS向けだから絶対壊れない」わけではありませんが、24時間稼働用途では合理的です。


8. 5400rpmと7200rpm

HDD回転数が高いほど一般に、

  • 連続転送
  • アクセス性能

で有利になりやすいです。

一方、

  • 消費電力
  • 発熱
  • 騒音

も増えやすい傾向があります。

NASではネットワークが先にボトルネックになることも多いため、回転数だけで選ばない方がよいです。


9. 1GbEではなぜ100MB/s前後で止まるのか

1GbEは1Gbpsです。

byteへ直すと、

1Gbps ÷ 8 = 125MB/s

理論上限は125MB/s。

実際にはEthernet/IP/TCP/SMBなどのオーバーヘッドがあるため、実ファイル転送では100〜115MB/s前後で頭打ちになることが多いです。

つまりHDDが200MB/s出せても、1GbEならネットワーク側が先に詰まります。


10. 2.5GbE・5GbE・10GbE

理論値は、

規格理論bit速度byte換算
1GbE1Gbps125MB/s
2.5GbE2.5Gbps312.5MB/s
5GbE5Gbps625MB/s
10GbE10Gbps1250MB/s

実効はこれより低くなります。

2.5GbE

家庭用NASで非常に使いやすい帯域です。

単体HDDでも1GbEを超える速度が出るため、性能差を感じやすいです。

10GbE

SSD NASや複数HDD RAIDでは意味があります。

ただし、

  • NAS
  • スイッチ
  • PC NIC
  • ケーブル

すべてが対応して初めて有効です。


11. NASのCPUは何に効く

単純なファイル保存ならCPU性能はそこまで要りません。

しかし、

  • 写真AI分類
  • 動画トランスコード
  • 暗号化
  • Docker
  • VM
  • 複数アプリ

では差が出ます。

NASは「ストレージ」ですが、上位機は小型サーバーに近いです。


12. メモリ容量

一般的な家庭用途なら2〜4GBでも成立します。

しかし、

  • 多数アプリ
  • Docker
  • VM
  • 大量写真データベース

では8GB以上が有利になります。

増設できるNASなら将来性があります。


13. ハードウェアトランスコード

動画を再生端末に合わせて、

  • 解像度
  • bitrate
  • codec

を変換する処理です。

CPUだけで行うと負荷が高いため、GPU/Media Engine等でハードウェア支援するNASがあります。

ただし家庭内再生で端末側が元動画codecを直接再生できるなら、トランスコード不要です。


14. 写真保存用途

重視するのは、

  • RAID1以上
  • 自動スマホバックアップ
  • サムネイル生成速度
  • 顔認識/検索
  • クラウド同期
  • 外部バックアップ

です。

写真枚数が数十万になるとCPU・メモリ差も効きます。


15. 動画保存用途

4K動画では1本数十GBになることがあります。

重要なのは、

  • 容量
  • 有線速度
  • codec互換
  • TV/スマホアプリ

です。

高bitrate動画を複数台同時再生するなら2.5GbE以上が有効です。


16. PCバックアップ用途

Windows/Macのバックアップ先として使う場合、

  • 自動世代管理
  • スナップショット
  • ランサムウェア対策
  • 容量制限

を確認します。

バックアップ先そのものを常時書込み可能にしていると、マルウェア被害がNASまで及ぶ可能性があります。


17. 監視カメラ用途

24時間録画では大量書込が発生します。

重要なのは、

  • 対応カメラ数
  • ライセンス
  • 専用アプリ
  • HDD耐久性
  • 保存日数

です。

例えば8Mbpsカメラ4台なら合計32Mbps。

1日あたり、

32Mbps ÷ 8 × 86,400 ≒ 345,600MB

約346GB/日です。

30日なら約10TB級になります。


18. Docker・VM用途

ここからNASはサーバーになります。

必要なのは、

  • x86/ARM
  • CPUコア
  • RAM
  • SSD
  • 2.5/10GbE

です。

仮想マシンを本格運用するなら4GB RAMでは厳しい場合があります。


19. 消費電力と常時稼働コスト

NASは24時間稼働することが多いため、数W差でも年間では積み上がります。

例えば20W常時なら、

20W × 24時間 × 365日 = 175.2kWh

です。

30円/kWhなら年間約5,256円。

HDD台数が増えると待機時消費も増えます。


20. RAIDリビルド

HDD故障後に交換ディスクへデータを再構築する処理です。

大容量HDDでは数時間〜数十時間かかることがあります。

リビルド中は全HDDへ高負荷がかかります。

古いHDDが同時期に故障するリスクもあるため、重要データは事前に別バックアップを持ちます。


21. UPSは必要か

停電時に突然電源が落ちると、

  • 書込み中データ
  • ファイルシステム
  • RAID

へ影響する可能性があります。

UPSとNASをUSB/ネットワーク連携し、停電時に安全シャットダウンできると安心です。


22. どの構成を選ぶか

家族写真・PCバックアップ

  • 2ベイ
  • RAID1
  • 4〜8TB×2
  • 1GbEまたは2.5GbE
  • 外部バックアップ

動画・複数PC

  • 4ベイ
  • RAID5/6
  • 2.5GbE以上

クリエイター

  • 4ベイ以上
  • 10GbE
  • SSD cacheまたはSSD volume
  • 大容量RAM

Docker/VM

  • 高性能CPU
  • 8〜16GB以上RAM
  • SSD
  • 2.5/10GbE

23. 過剰性能になりやすいもの

10GbE

PC側が1GbEなら意味がありません。

4ベイRAID6

写真数百GBだけなら過剰な場合があります。

高性能CPU

ファイル保存だけなら持て余します。


24. 結局どこを見る?

①データ量 → ②失ってよいか → ③必要ベイ数 → ④RAID → ⑤ネットワーク速度 → ⑥CPU/RAM → ⑦バックアップ → ⑧UPS

の順です。

NAS選びで最も重要なのは「何TB入るか」ではなく、データをどう守り、どの速度で使いたいかです。


購入直前チェックリスト

  • 1/2/4ベイの違いを理解した
  • RAID容量を計算した
  • RAIDをバックアップと誤解していない
  • 3-2-1バックアップを検討した
  • HDDのTB表記と実効容量差を理解した
  • 1GbEの実効上限を理解した
  • 必要なら2.5/10GbEを選ぶ
  • PC/スイッチ側も同じ速度に対応する
  • 動画トランスコードが必要か確認した
  • Docker/VMならCPU/RAMを増やす
  • 監視カメラなら1日書込量を計算した
  • 常時稼働消費電力を確認した
  • UPS連携を検討した

参考資料

  • SNIA, RAID and storage fundamentals
  • IEEE 802.3 Ethernet standards
  • 各NASメーカーのRAID/バックアップ技術資料

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