なぜ金属は錆びるのか――酸化還元から腐食・電池までをつなげる
鉄が錆びる理由を電子の移動として捉え、腐食・電池・電気分解が同じ原理でつながることを説明する。
鉄を屋外に置いておくと赤茶色の錆が生じる。
単に「酸素と触れたから」と説明されることが多いが、実際の腐食は水分、電解質、電子移動を含む電気化学反応である。
酸化とは「酸素と結びつくこと」だけではない
歴史的には酸化は酸素との反応として理解された。
現在ではより一般的に、電子を失う反応を酸化、電子を受け取る反応を還元と呼ぶ。
酸化と還元は必ず対になって起こる。
ある物質が電子を放出するなら、その電子を受け取る相手が必要だからである。
鉄の腐食は小さな電池のように進む
鉄表面に水膜が存在すると、場所によって酸素濃度や不純物、組織などに差が生じる。
ある場所では鉄が電子を放出してイオン化し、別の場所では酸素などが電子を受け取る。
この局所的な電池反応が表面各所で進行し、最終的に鉄酸化物や水酸化物を含む錆が形成される。
塩水で錆びやすい理由
純水より塩水の方が電気を通しやすい。
塩化物イオンなどの存在によって電気化学反応が進みやすくなり、保護膜が破壊されることもある。
海岸や融雪剤を使用する地域で金属腐食が問題になるのはこのためである。
ステンレスはなぜ錆びにくいのか
ステンレス鋼にはクロムが含まれている。
表面に非常に薄く緻密な酸化クロム系の不動態皮膜が形成され、内部の金属を環境から保護する。
「酸化しない」のではなく、むしろ表面が適切に酸化することで、それ以上の腐食を抑えている。
ただし塩化物環境などでは不動態皮膜が局所的に破壊され、孔食を起こすことがある。
犠牲陽極という逆転の発想
鉄を守るために、鉄より酸化されやすい金属を意図的に接続する方法がある。
亜鉛などを先に腐食させ、鉄を陰極側に保つ。
これが犠牲陽極による防食である。
船舶、配管、タンクなどで利用されている。
電池も同じ酸化還元反応
電池では、片方の電極で酸化反応が起こり、電子が外部回路を流れ、もう一方の電極で還元反応が起こる。
腐食は望ましくない電池反応、電池は利用可能な形に制御した酸化還元反応と見ることもできる。
プラズマや半導体装置でも重要な考え方
材料表面で何が酸化され、何が揮発し、何が残留するかは、半導体プロセスやプラズマ処理でも重要である。
酸化物の生成自由エネルギー、蒸気圧、表面反応速度などを考えることで、「酸素を当てれば除去できる」といった単純な理解では不十分であることが分かる。
まとめ
錆は単なる汚れではなく、電子移動を伴う電気化学反応の結果である。
腐食、防食、電池、電気分解は、すべて酸化還元という同じ基本原理の上にある。
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