地震はなぜ起こるのか?――揺れの正体から「予知できない理由」まで
断層に蓄積するひずみ、P波・S波、震度とマグニチュード、巨大地震、地震予知と早期警報の違いまでを整理する。
この記事の結論
- 断層に蓄積するひずみ、P波・S波、震度とマグニチュード、巨大地震、地震予知と早期警報の違いまでを整理する。
- 地球科学の主要な仕組みと、よくある誤解を分けて理解できます。
- 現在分かっていることと、まだ科学的に確定していないことを区別して解説します。
地震はなぜ起こるのか?――揺れの正体から「予知できない理由」まで
地震が起こると、地面そのものが揺れる。
しかし「地面が揺れる」というのは結果であって、地震の本体ではない。
地震とは、地下の岩盤に蓄積されたひずみが急激な破壊・すべりによって解放され、そのエネルギーが地震波として広がる現象である。
岩盤は本当に動くのか
岩石は硬く見える。
しかしプレート運動によって長い時間力を受けると、地下の岩盤には少しずつ変形が蓄積する。
断層面が摩擦によって固着している間、周辺岩盤には弾性的なひずみが溜まる。
限界を超えると断層が急激にすべる。
このとき蓄積されていた弾性エネルギーの一部が地震波として放出される。
地震の揺れは波として伝わる
主な実体波にはP波とS波がある。
P波
PはPrimaryのP。
進行方向と同じ方向に押したり引いたりする縦波で、速度が速い。固体だけでなく液体中も伝わる。
S波
SはSecondaryのS。
進行方向に対して垂直方向に揺れる横波で、P波より遅い。液体中は伝わらない。
地震が起こると先にP波が届き、その後、より大きな揺れを伴うS波などが到達することが多い。
緊急地震速報は「予知」ではない
緊急地震速報は、地震が起きる前に未来を予知しているわけではない。
地震はすでに発生している。
震源に近い観測点がP波を検知し、そこから震源や規模を素早く推定して、まだ強い揺れが到達していない地域へ電気通信で情報を送る。
電波は地震波より圧倒的に速い。
その速度差を利用している。
したがって震源に近い場所では速報が強い揺れに間に合わない場合もある。
マグニチュードと震度は何が違うのか
この二つは混同されやすい。
マグニチュードは地震そのものの規模を表す。
一方、震度はある地点でどれほど揺れたかを表す。
同じ地震でも、震源からの距離、深さ、地盤、地形、建物条件などによって揺れ方は変わる。
したがって同じ地震でも地域ごとに震度は違う。
マグニチュード1の差は小さくない
マグニチュードは対数尺度である。
一般にマグニチュードが1大きくなると、放出エネルギーではおよそ32倍になる。
M7とM8は「1だけ違う」のではない。
エネルギー規模では桁違いである。
巨大地震はどこで起こるのか
世界最大級の地震の多くは、海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込む境界で起こる。
プレート境界が固着している間、陸側プレートは引きずられ、ひずみを蓄える。
ある領域が大規模に破壊すると、M8~9級の巨大地震になることがある。
日本近海の南海トラフ、日本海溝、千島海溝などはその代表的な沈み込み帯である。
津波はなぜ起こるのか
海底下で大地震が起こり、海底が広い範囲で上下に変位すると、その上にある海水も持ち上げられたり沈み込んだりする。
その変位が長い波として海洋を伝わる。
これが津波である。
津波は通常の風波とは性質が大きく異なる。
外洋では波高が小さくても、波長が非常に長く、莫大な水量が移動する。沿岸の浅い海へ入ると速度が落ち、波高が増すことがある。
なぜ地震を予知できないのか
「プレートにひずみが溜まるなら、限界を測れば予知できるのでは」と思う。
しかし現実の断層は極めて複雑である。
地下深部の摩擦状態、流体、温度、応力分布、断層面の微細構造などを十分な精度で測ることはできない。
また、動物の異常行動、いわゆる地震雲、ラドン濃度、電磁気異常、小地震の変化など多くの前兆候補が研究されてきたが、特定の大地震について日時・場所・規模を再現性高く事前指定できる方法は確立していない。
USGSも、主要地震を現在の科学では予知できないと明確にしている。
予知できないなら何も分からないのか
そうではない。
「明日の14時にM8が起きる」といった短期予知はできなくても、
- 活断層がどこにあるか
- プレート境界がどこにあるか
- 過去にどの程度の地震が起きたか
- 今後数十年で一定規模の地震が起こる確率
- 揺れやすい地盤はどこか
などは評価できる。
つまり科学が得意なのは、現時点では予言ではなくリスク評価である。
地震科学の目的
地震を止めることはできない。
正確な日時予知もできない。
それでも耐震設計、ハザードマップ、津波避難、緊急地震速報、長期評価によって被害を減らすことはできる。
地震研究の価値は、「当てること」だけではない。
避けられない自然現象を、社会災害にしないための知識を増やすことにある。
まとめ
地震は地下の岩盤に蓄積されたひずみが、断層の急激なすべりによって解放されることで起こる。
短期的な地震予知は現在の科学ではできない。
しかし発生メカニズムや危険地域、長期確率、揺れやすさは着実に理解が進んでいる。
「予知できない」と「何も分からない」は同じではないのである。
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参考資料
- U.S. Geological Survey, “Can you predict earthquakes?”
- U.S. Geological Survey, Earthquake Hazards Program
更新履歴
- 2026/9/3:受領原稿を現行の記事スキーマへ変換し、宇宙・地球カテゴリの記事として公開。
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