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電動アシスト自転車では、
- 16Ah
- 100km走行
- 強力アシスト
- 大容量バッテリー
- 子乗せ対応
といった表示が目立ちます。
しかし、16Ahだけでは電池エネルギーは分かりません。
また「100km走れる」という数字も、平坦路・軽負荷・省エネモードなど一定条件での値です。
電動アシスト自転車は、
モーター → アシスト制御 → バッテリー → 車体 → 人間
を一つの系として見る必要があります。
1. 電動アシスト自転車は「モーターだけで走る自転車」ではない
日本の一般的な電動アシスト自転車は、ペダルを人が踏んだ力に応じてモーターが補助する車両です。
人が踏まなければ、原則としてモーターだけで通常走行する設計ではありません。
ここが、スロットルだけで走れる電動モペット等との大きな違いです。
2. 日本ではアシスト比に上限がある
日本の道路交通法上の「駆動補助機付自転車」は、速度域に応じてアシスト力の上限が定められています。
概念的には、
- 10km/h未満:人力1に対して補助力は最大2まで
- 10〜24km/h:速度上昇とともに補助比率を減らす
- 24km/h以上:アシストしない
という考え方です。
つまり、
高級車だから時速30kmまでモーターが強く押してくれる
というものではありません。
高性能化は主に、
- 発進
- 坂道
- 制御の自然さ
- バッテリー
- 車体性能
に現れます。
3. モーター出力Wだけでは選べない
モーターのW数は重要ですが、乗ったときの「力強さ」にはトルクも関係します。
回転運動では、
P = τω
です。
- P:出力
- τ:トルク
- ω:角速度
低速発進や坂道では高回転速度よりトルクが重要です。
4. トルクNmとは
トルクは回転させる力です。
τ = F × r
例えばクランクや車輪に大きいトルクを与えれば、低速でも強く押せます。
ただしメーカーがモータートルクを公開していないことも多く、実際には試乗や坂道比較が有効です。
5. 前輪・後輪・中央モーター
前輪駆動
前から引っ張る感覚。
構造を簡素化しやすい一方、路面状況によって前輪の接地に影響されます。
後輪駆動
後ろから押す感覚。
スポーツ系にも使われます。
センターモーター
クランク付近で人の入力と合成し、変速機を通して後輪へ伝えます。
坂道・発進で自然な制御をしやすい構成です。
方式だけで優劣は決まりませんが、乗り味が変わります。
6. Ahだけでバッテリー容量を比べない
Ahは電荷量です。
本当に比較したいのはWhです。
Wh = V × Ah
例えば、
- 25.2V × 16Ah = 403Wh
- 36V × 12Ah = 432Wh
なら、12Ahの方がエネルギーは多いです。
したがって、
16Ahだから12Ahより大容量
とは限りません。
7. 何km走れるかはWhだけでも決まらない
航続距離は、
航続距離 ≒ 使用可能Wh ÷ 1kmあたりの消費Wh
で考えられます。
1kmあたり5Whなら400Whで約80km。
8Wh/kmなら約50km。
消費Wh/kmは条件で大きく変わります。
8. 坂道で航続距離が減る理由
質量mを高さhだけ持ち上げる位置エネルギーは、
E = mgh
です。
車体+人+荷物100kgを高さ100m上げるだけでも、
100 × 9.8 × 100 = 98,000J
約27Whの位置エネルギーが必要です。
実際にはモーター・駆動損失もあるためさらに多く消費します。
坂道が多い地域ではカタログ航続距離との差が大きくなります。
9. 体重・荷物も効く
重いほど、
- 坂道で必要な位置エネルギー
- 加速エネルギー
- タイヤ変形損失
が増えます。
子乗せでは大人+子ども+荷物で総重量が大きくなり、航続距離が短くなります。
10. 発進回数も重要
停止から速度vまで加速する運動エネルギーは、
E = ½mv²
です。
信号の多い街中では発進を何度も繰り返すため、平坦な長距離走行より電池を使います。
11. 気温でバッテリー性能が変わる
リチウムイオン電池は低温で内部抵抗が上がり、
- 出力
- 充電受入性
- 実効容量
が低下します。
冬は夏より航続距離が短くなることがあります。
高温は長期劣化を促進します。
12. タイヤ空気圧
空気圧が低いとタイヤ変形が増え、転がり抵抗が上がります。
乗り心地は柔らかくなりますが、
- 電費悪化
- タイヤ摩耗
- 操縦安定性
に影響します。
メーカー指定範囲で管理します。
13. 強モード・標準・エコ
アシストモードはモーターがどこまで補助するかを変えます。
強
坂道・子乗せに有利。
消費電力は増える。
標準
日常用途。
エコ
人力割合を増やし航続距離を伸ばす。
カタログ最大距離はエコ系条件で示されることが多いため、普段強モードならその距離は期待しない方がよいです。
14. バッテリー劣化
リチウムイオン電池は、
- サイクル
- 高温
- 高SOC放置
- 深放電
で劣化します。
新品400Whが数年後に320Whになれば、同じ走り方でも航続距離は約20%短くなります。
15. バッテリー交換価格も見る
電動アシスト自転車は車体より先にバッテリー交換が必要になることがあります。
購入時には、
- 交換バッテリー価格
- 将来供給
- 保証
も確認します。
長期保有では重要なコストです。
16. 車体重量
電動アシスト車は20〜35kg級の製品が多く、一般自転車より重いです。
走行中はアシストで気になりにくくても、
- 駐輪ラック
- 段差
- 車載
- バッテリー切れ
では重量差が大きく効きます。
17. 子乗せでは低重心が重要
子乗せモデルでは、
- 小径タイヤ
- 低いフレーム
- 低重心
- 幅広スタンド
などが使われます。
停車時に子どもを乗せた状態では、走行性能より倒れにくさが重要です。
18. タイヤ径
20インチ級は、
- 車体を低くしやすい
- 発進トルクを得やすい
- 子乗せ低重心
に向きます。
26/27インチ級は、
- 段差乗越え
- 直進安定
- 高速巡航
で有利になりやすいです。
19. 変速機
内装変速
Hub内部で変速。
停車中に変速できる製品もあり、チェーン外れに強い。
外装変速
多段化しやすく効率が高い。
スポーツ用途向き。
電動アシストではモーターがあるため段数の多さだけで優劣は決まりません。
20. 変速はモーター効率にも効く
坂道で重いGearのまま低回転・大トルクを要求すると、人もモーターも効率が悪くなる場合があります。
適切に軽いGearへ落として、Pedal Cadenceを保つ方が効率的です。
21. ブレーキ
車重が重く速度も出るため、ブレーキ性能は重要です。
- Rim Brake
- Roller Brake
- Disc Brake
などがあります。
雨天・下り坂・子乗せでは制動力と放熱性能を重視します。
22. 回生充電は大きく期待しない
一部方式では回生機能を持つことがあります。
しかし自転車は総質量・速度が自動車より小さく、回収できる運動エネルギーも限定的です。
航続距離を大きく伸ばす主役ではありません。
23. 通勤用途
見る順番:
- 距離
- 坂道
- 雨天
- 充電場所
- 車体重量
片道5kmなら大容量バッテリーは必須ではない場合があります。
24. 子乗せ用途
重視:
- 低重心
- 強アシスト
- 大型スタンド
- ブレーキ
- バッテリー
- チャイルドシート適合
25. 坂道の多い地域
重視:
- 発進トルク
- センターモーター等の制御
- 強モード航続
- ブレーキ
- 変速
カタログ最大距離より坂道試乗を優先します。
26. 過剰性能になりやすいもの
20Ah超大容量
近距離通勤だけなら重量増の方が気になることがあります。
多段変速
モーターアシストで使わない段数が多い場合があります。
スポーツ高出力感
法規上24km/h以上ではアシストしないため、高速巡航では人力性能が重要です。
27. 結局どこを見る?
①用途 → ②坂道 → ③総重量 → ④Wh → ⑤強モード航続距離 → ⑥モーター制御 → ⑦車体重量 → ⑧ブレーキ → ⑨バッテリー交換価格
の順です。
電動アシスト自転車は「Ahが大きい物」ではなく、自分の走行負荷に必要なWhと車体性能で選びます。
購入直前チェックリスト
- AhだけでなくVとWhを確認した
- 日本のアシスト速度制限を理解した
- カタログ最大距離の測定条件を確認した
- 坂道・体重・荷物で距離が減ると理解した
- 冬の航続距離低下を考慮した
- 強モードで必要距離を走れるか
- 車体重量を持ち上げられるか
- 子乗せなら低重心・スタンド・ブレーキを確認した
- タイヤ空気圧を管理できる
- バッテリー交換価格と供給期間を確認した
- 試乗して発進・坂道制御を確認した
参考資料
- 道路交通法・道路交通法施行規則(駆動補助機付自転車)
- 各電動アシスト自転車メーカー仕様書